FRB総資産推移

量的引き締めは完了、資産は再拡大を経て足踏み

2026年に入り、FRBの資産は「減少」から「増加」へ転じました。QT(量的引き締め)は2025年12月1日をもって終了し、FRBは短期国債の買入れを開始。米国債の保有が増える一方、住宅ローン担保証券(MBS)は償還による減少が続いており、資産の中身はMBSから米国債へと入れ替わりつつあります。8月半ば以降も短期国債の買入れは続いていますが、その規模はMBSの償還分の再投資にとどまっており、資産規模は横ばいで推移しています。

*スマホでのブラウズは横画面を推奨します。

【分析の視点】
このチャートに刻まれているのは、危機が起きるたびにFRB(米連邦準備制度理事会)が積み上げてきた「通貨の地層」です。

  • 2008年 リーマンショック以降:金融システムの崩壊を防ぐため、人類史上例を見ない規模の量的緩和(QE)が始まり、チャートは一段目の大きな上昇を記録しました。
  • 2020年 コロナショック:前回の比ではない「垂直に近い上昇」を見せ、世界中に天文学的なマネーが供給されました。これが現在のインフレ、そして金価格の長期上昇トレンドを形成した源泉の一つです。
  • 2022年〜2025年 アフターコロナのマネー吸収:インフレ抑制のため、FRBは量的引き締め(QT)へと舵を切りました。チャートの右肩下がりは、市場から資金が吸い上げられている状態を示しています。
  • 2026年 引き締めの終焉と「再拡大」、そして中身の入れ替え:QTは2025年12月1日付で終了。短期国債の買入れで米国債の保有が増える一方、MBSは償還による減少が続き、資産の重心は米国債へと移っています。8月半ば以降も短期国債の買入れは続いていますが、MBSの償還分の再投資にとどまり、資産規模は横ばいで推移しています。

【現在地】
QTは2025年12月1日をもって終了し、同月から短期国債の買入れによる新体制に移行しました。買入れは当初月400億ドルのペースで始まり、MBS(不動産担保証券)償還再投資(=MBSの償還資金を短期国債の買入れに充てる仕組み)と合わせて、準備預金を「潤沢」な水準に維持する枠組みです。米財務省の国債発行諮問委員会の試算では、2026年通年で「FRBの短期国債買入れは約3600億ドル、MBS償還再投資は約1800億ドル、合計約5400億ドル規模になる」と見込まれていました。
FRBの総資産は、QT終了直後の2025年12月3日(6兆5358億ドル)を底に拡大に転じ、2026年8月中旬には6兆7600億ドルまで増加しました。この間、米国債の保有は約3500億ドル増え、MBSは約1200億ドル減っています。ところが、NY連銀のペルリ氏は9月22日の講演で、銀行の資金需要に変化がなく、短期金融市場も落ち着いていることなどから、8月半ば以降は準備預金を積み増すための買入れをゼロにしていると説明しました。短期国債の買入れ自体は続いていますが、MBSの償還資金を再投資する分にとどまり、総資産は6兆7300億〜6兆7600億ドル台で横ばいです(10月14日時点で6兆7556億ドル)。資産の規模は止まっても、中身の入れ替えは続いています。準備預金を積み増すための買入れは市場環境次第で再開され得るとされており、前述の試算どおりに進むかは見通しにくくなっています。
一方、長期債利回りの上昇への対応として、米財務省は長期債バイバック(国債の買い戻し)を増額しています。コロナ禍で発行された巨額の低利回り債券から、現在の高利回り債券への借り換えが進行中であることに加え、ハイパースケーラーによる旺盛な社債発行も債券市場全体の需給を圧迫する一因とされ、米30年債利回りは10月上旬に5.6%台まで上昇しました。ただ、その後はAI関連企業の信用不安(コアウィーブ社債の急落)を受けた安全資産への資金移動もあり、5.4%台へ低下しています(10月15日時点で5.43%)。
焦点は、準備預金が「潤沢」とされるレンジ(2.9〜3.1兆ドル程度)を維持できるかどうかです(10月7日時点で約3.03兆ドル)。HY債スプレッドは、AI関連企業の信用不安が広がるなかで3.2%台と3月末以来の水準まで拡大しています。一方、金融ストレス指数は10月初めに上昇した後、再び低下しており、金融市場全体への波及はまだ見られません。信用市場の一角にとどまる動きなのか、金融市場全体へ波及していくのか、今後の展開で見極める必要があります。

▶︎ 関連データ:銀行システムの「余剰」を測る流動性の貯水池(準備預金残高)
▶︎ 関連データ:米国債市場の「不整脈」を測る(米国債ボラティリティ指数)

【チャートの操作方法】
期間の拡大(ズーム):グラフ上の気になる期間をマウスで左から右へドラッグすると、その範囲を詳しく拡大して表示できます。
表示を元に戻す:拡大後にグラフ内の右上に表示される「Reset zoom」ボタンをクリックすると、元の全期間表示に戻ります。

FRED® Graphs ©Federal Reserve Bank of St. Louis. All rights reserved. All FRED® Graphs appear courtesy of Federal Reserve Bank of St. Louis. https://fred.stlouisfed.org/

目次