「ゴールドは、現在もなお究極の決済手段である」

去る6月22日、「マエストロ」と呼ばれた男が逝った。独特の曖昧な言葉でマーケットを煙に巻きながら、幾度もの波乱を乗り切った元FRB(米連邦準備制度)議長——アラン・グリーンスパン。享年100歳。

ドルの番人として辣腕を振るったマエストロだが、彼にはもう一つの顔があった。

1966年、のちにFRB議長となるこの男は、論考「金と経済的自由」を世に出した。その中で彼は金本位制を熱烈に擁護し、不換紙幣を痛烈に批判した。思想家アイン・ランドの知的サークルの一員として、まだ野に在った時代のことである。

それから21年後、グリーンスパンは、ロナルド・レーガン大統領の指名でFRB議長に就任する。以後18年間、彼は世界最大の中央銀行を率いた。金本位制とは対極にある、不換紙幣の番人として。

ドルの番人としての発言は、つねに曖昧を貫きマーケットに言質を取らせなかった。しかし、ゴールドについての発言だけは実に明快だった。

欧州各国中央銀行がユーロ発行を前に金準備の売却に動いていた1999年、議会でロン・ポール議員から「なぜ米国は金を手放さないのか」と問われたグリーンスパンはこう答えた。

「ゴールドは、現在もなお究極の決済手段であり続けている。1944年のドイツが戦時下で物資を調達する際、紙幣(法定通貨)ではなく金によってのみ決済できたというのは、非常に興味深い事実である。

金はいかなる時も受け入れられる究極の決済手段であり、通貨の安定性やその根源的な価値を裏付ける要素として認識されている。歴史的に見ても、これこそが常に各国政府が金を保有する理由である。」

FRB議長という立場から発せられた言葉として、静かな重みがある。

いま、FRBは新たな議長を迎えた。グリーンスパン流の曖昧さへの回帰を予感させる、とする見方がもっぱらである。マエストロは去った。しかし、彼の言葉は残り、歴史に刻まれている。

 

出所:米国下院銀行委員会議事録(1999年5月20日)

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