10月5日、ロンドンの「エネルギー・インテリジェンス・フォーラム」で、サウジアラムコのアミン・ナセルCEOは、商業在庫が「60億バレルを下回り」、「供給の余裕は恐ろしく薄い」と述べた。ただし、この発言が挙げる「開戦時に世界はほぼ100億バレルの石油在庫を抱えていた」という数字と、「商業在庫60億バレル未満」という数字は、スコープの異なる別カテゴリーの数字とみられ、その内訳を示されていない。ナセル氏は2022年にも同種の警告を発しており、世界最大の産油企業のトップが需給逼迫を強調する背景に、増産・高値観測を正当化する動機も疑われる。
とはいえ、綱渡りの状況そのものが作り話というわけではない。世界の原油生産のおよそ3割を占める中東では、操業停止の規模が2026年7月の日量500万バレルから8月には670万バレルへ拡大し、米エネルギー情報局(EIA)は開戦前の水準への回復を2027年第2四半期以降と見込む。世界最大の産油国である米国自身の戦略石油備蓄も、開戦直前(2月13日)の4億1540万バレルから9月18日時点で2億8455万バレルへ、半年あまりで3割強減少した。発言の数字は額面通りに受け取れないとしても、綱渡りの状況が続いていることに変わりはない。かくして、供給制約由来のインフレ圧力は続く。 →航海録一覧はこちら
